第 52 回沖縄県公衆衛生学会
会長 金城芳秀
第 52 回沖縄県公衆衛生学会(オンライン)を開催させていただくにあたり、ご挨拶申 し上げます。
1969 年、本学会の基盤となる「沖縄県公衆衛生協会」が設立されました。本協会は予防 医学を推進する一機関として今日に至っています。その足跡を疾病対策から振り返ると、 性病、結核、ハンセン病、風土病(マラリア、フィラリア、鉤虫症等の寄生虫症)、日本 脳炎、風疹、麻疹、そしてハブ咬傷まで、沖縄の健康課題解決を継続的に支援されてきま した。例えば、多い時には 500(人/年)を超えていたハブ咬傷者数が、2018 年には 50 人以下となり、 2000 年以降は咬傷被害による死亡者数は0(ゼロ)と報告されています (沖縄県, 2020)。
沖縄群島要覧(1951 年)によれば、沖縄戦後の医療職者は、医師 64 人、歯科医師 19 人、看護婦 191 人、助産婦 150 人および薬剤師 4 人という数値です。これらに相当する 「助手」あるいは「見習」も報告されていますが、沖縄群島(54 島、有人離島 39)の医 療人材の不足は、われわれの想像を超えるものです。2020 年には人口 10 万対でおよそ、 医師 240 人、歯科医師 58 人、看護師 1,060 人、助産師 30 人、薬剤師 134 人、保健師 53 人であり、現在の課題は量的不足から都市部と離島部のバランスへと移っています。この 間、離島部・無医地区における医介輔制度(1951 年~, 最後の医介輔は 2008 年に廃業) が独自に実施され、公衆衛生看護婦による駐在保健婦制度(1951 年~1996 年)は、沖縄 群島から無保健婦地域を無くした特筆すべき足跡とされています(沖縄県資料:「長寿の あしあと」1995 年)。
2020 年 1 月より、新たな健康危機・パンデミックが現在進行中です。新型コロナウィル ス感染症(COVID-19)の陽性者数は、2021 年 3 月 31 日現在、全世界では 1 億 2,900 万 人以上、全国は 47 万人を超え、沖縄県は 9 千 5 百人に迫り、日々更新されています。国 内・県内においても、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株が相次いで報告 され、感染性の増加や抗原性の変化が懸念されています。COVID-19 との闘いはこれから が本番といえそうです。これまでも経験してきた逆境において、沖縄公衆衛生の先達が示 された強靭さとしなやかさは、われわれに受け継がれていると信じて、Think globally, act locally and globally に挑戦していくことになります。
最後に、コロナ禍で研究活動の実施もままならぬ折、タイトなスケジュールで懸念され た演題募集にも関わらず、学会抄録を提出して頂いた発表者・チーム、これまでとは異な る形での学会開催を支援して頂いている沖縄県公衆衛生協会の皆様に、この場を借りて、 心よりお礼を申し上げます。次回第 53 回につなげるという役目を頂きましたことに、深 く感謝申し上げます。
Okinawa Public Health Association